人と関わることが何よりも嫌いな佐藤海斗はある日、ファストフードで不思議な少女と出会い少しづつ心を開いていった。星野美波と名のるその少女は夏休みがあけた九月一日に自殺をすると告白。なんとしても自殺を思いとどまらせようと美波の周辺を調べる海斗が知ってしまった衝撃の事実とは。
妻を亡くしてから3年、一之瀬明は高校生になった娘の葵、小学生の息子、蓮と共に悲しみを乗り越え穏やかな日々を送っていた、ある日、友達と朝帰りした葵の異変に気がつくが…。復讐の螺旋に巻き込まれた一ノ瀬家に幸せは訪れるのか。
二十二歳の若さで、競艇史上最年少賞金王に輝いた佐藤寿木也は童貞だった、小、中、高校時代を野球に捧げ、卒業するとすぐに競艇選手を育成する養成所に通った。
八方美人で、見栄っ張り、しかし見栄を張るためには努力を惜しまない男は、またも青春時代を競艇に捧げた。その甲斐あって、競艇選手としては超一流となった佐藤は童貞を捨てるべく、彼女探しに奔走し始める。そんな時にキャバクラで出会った星野莉菜の見た目は、佐藤のどストライクだったが…。
零細企業に務めるサラリーマンの新田順平には在日の妻、理沙と三人の娘がいた。会話のない夫婦、なつかない娘、少ない小遣いに辟易していた順平が唯一心を許していたのが、理沙の妹、麻里奈の夫である白井直也だった。
五歳年下、上場企業の会社経営、順平とは何もかもが違う直也だったが、在日朝鮮人の嫁を持つ者どうしは意気投合、酒を交わしては嫁の悪口で盛り上がっていた。
そんな白井から「嫁を殺しませんか？」と相談を受けた順平は半信半疑ながらも完全犯罪を画策していく、そんな折に白井に紹介された荒川宏美との不倫も相まって、次第に妻殺害が現実味を帯びていく。
在日朝鮮人の三世として日本で生まれ育った朴宣美と妹の麗娜は事業に成功した両親の元で不自由なく暮らしていた。生まれ持って天才的な頭脳を持った姉の宣美は朝鮮学校から日本の私立中学に入学する、そこで待っていたのは在日朝鮮人に対する偏見と差別、日本人と自分の違いが分からないまま日本に幻滅していく中で出会った三人の日本人、親友の典子と窮地を救ってくれた警察官の亮二、父親の店でアルバイトとして働く孝介は宣美に日本人の素晴らしさ、国境を越えた友情と恋心を与えてくれたが、普通の幸せを願う宣美をモンスターと変えたのもまた、彼らだった。
なぜこんな人生になってしまったのか。
血だらけになって横たわる妻を見下ろしながら佐藤達也は考えを巡らせていた、今年で三十五歳になる佐藤は三年前に結婚、美容師で忙しい妻は家事をしないのは勿論、毎日イライラする様になり佐藤に当たり散らした、次第に悪化していく夫婦関係は口論の末に妻を殺害するという最悪の結末になる。
結婚相手という極めて重要な『選択』を間違えてしまった佐藤は現実の世界には以前から不満を抱いていた、三年間毎日お参りをすると願いを聞いてくれる神社、叶うわけがないと思いながらもお参りする日々、佐藤の願いは二十年前に戻り誤った『選択』をやり直す事だった。
妻を殺害した日、願いが叶い精神だけが十五歳に舞い戻った佐藤は人生をやり直す事を決意する、再び同じ人生をなぞる中『選択』を変えることで未来を変えていく佐藤、二十年前には断った須藤直子の告白を受け入れる『選択』をする事でその後の人生が大きく変わっていく、一度経験した優位性を生かして佐藤は当時関与することすら拒んだ、高校のイジメ問題やブラック企業でのパワハラ問題に立ち向かい解決していく。
退屈な世界に辟易していた十七歳の陽葵（ひまり）は怪しげな科学者、神宮寺と出会い千年後の未来まで冬眠する事になった。３０２５年、そこは肉体が存在しない脳が作る意識だけの世界。どんな人生も自由自在に何度でもやり直せる世界は魅力的だったが、陽葵は現実世界で宇宙の果てを目指す決断をする。同じ時代からやってきた春翔と神宮寺と共に神の名を持つ宇宙船『ゼウス』で旅に出る。
宇宙の果てに存在するものは一体なんなのか、現在の物理学を覆す新常識がその世界には存在した。陽葵と春翔に与えられた運命と宿命が静かに動き出す。